タラマンカでのフィールドワーク 10

ギジ録 コスタリカ探訪 その40


前回の例のように取りやめになってしまった受け入れもある。

しかし、観光の予約は他にも時々と入っているようだった。


2004年に僕が1か月ほど滞在していた期間には、結局1組の団体が宿泊付きでこの地に滞在した。

それはイタリア人の十数名からなる団体であった。

一般向けエコツアーの企画旅行らしく、老若男女(すべて大人)の混成だ。


一行は、まずルーカスさんの家に車で到着。

最初の歓迎を受ける。

そして、徒歩で共有林に向かう。

ロッジに到着し、チェックイン。

付近の散策のあと、夕食を楽しむ。

夜には、地域での取り組みの歴史などについて説明を受ける、というメニューであった。


イタリア語とスペイン語は似ているので、2つの組み合わせでコミュニケーションが成立していた。

英語を介さないので、僕は通訳としての出番は残念ながらなかった。

イタリア人の参加者たちは英語も話せる人が多かったので、彼らとは主に英語で会話できた。


受け入れスタッフ含め、その夜は全員がロッジに泊まる。

翌朝、朝食のあと、再びルーカスさんがガイドとなり周辺を散策。

ルーカスさんの家のところまで戻り、彼らは車で去っていった。

1泊2日の受け入れメニューがこうして完了。


ラテン系だから、ということだけではないだろうが、元々エコツーリズムに関心のある客層なので、この地での滞在を心から楽しんでいた。

明るくて親切な雰囲気が満ち溢れていた。

ルーカスさんのユーモアや、オリビアさんともう一人のスタッフの人の優しさもツアーに温かみを加えていた。


これとは別の日に、スペイン人の5、6名が訪問したこともある。

彼らは日帰りで2、3時間のみの滞在だった。

そして、苗木を買うのが彼らの目的とのことであった。

ということで、これは住民組織でなく、ルーカスさん家族のお客さんだったようだ。


ルーカスさんの家の周囲には、いくつかの種類の苗木ポットが置かれている。

訪問者たちは説明を受けながらそれらを吟味していた。

接ぎ木の方法なども、ルーカスさんの実演付きで説明されていた。


このスペイン人ご一行は、コスタリカの別の地域に土地を持っているらしい。

そこで小さな農園と庭園を作るために植物を買いに来たのだ。

色々考えた結果、自動車に積めるだけの苗木のポットを選んで、代金を払って満足気な笑顔で彼らは去っていた。


苗木販売もやっているのか!という素直な驚きが僕にあった。

ルーカスさんたちにとっては副業の一つに過ぎないのだろう。

それでも、噂を聞いてはるばる買いに来る客がいるのだ。

苗木の質や、それらに関する知識。

それらへの信頼があるのだろう。


「運を信じるのか?」

その言葉を僕は思い出していた。

運がよくて、遠方から客が来るのではない。

工夫と努力と意志の積み重ねの成果。

訪問客の受け入れに立ち会うことで、それをはっきりと認識させられる僕であった。



写真:ロッジに向かう途中の木道。

このときは乾季だったが、雨季には沼と化すらしい。

木材が2、3年で朽ちてしまうので、維持管理が大変とのことだった。

イタリア人の団体の訪問時(2004年)に撮影。


Giji Rockerのギジ録工房/Giji Rock Workshop

ギジ録。それは疑似的な議事録。 愛おしい時間の記憶。それを書き留めた記録。 100%正確とは限らない。 誇張や捏造が紛れているかもしれない。 だから議事録でなく、ギジ録。 ほぼ実話(99%)から、ほぼ作り話(1%)まで。 疑似度はそれぞれのギジ録ごとにまちまち。 アホらしいのは百も承知。 軽やかに笑い飛ばしてお許しください。 Gijiroku Rocks!