ジュリエット、恐るべし
時期:2000年頃
場所:関東地方某所
登場人物:ジュリエット(犬)、おっさん(ジュリエットの飼い主)、ギジロッカー
隣の貸家に新たな入居者が入った。
ガタイのでかいおっさん。
一人暮らし。
…なので静かかと思ったら大違い。
生活音が大きい。
電話の声がまる聞こえ。
テレビも大音量。
夜は酒飲んでそのまま寝落ちするらしい。
イビキはテレビをも上回る轟音。
とにかく騒々しい隣人であった。
先ほど一人暮らしと言った。
しかし、正確には犬と一緒に暮らしていた。
種類とかは分からないが、とにかく大型だった。
家の庭に小屋があり、そこで暮らしていた。
一言でいえば「とてもおっかない」見た目。
「猛犬注意!」という札があるが、そのアイコンになりそうだ。
名前はジュリエット。
猛獣感あふれる外見と名前のギャップ激しすぎ。
おっさんが早朝と夜に水と食事を与えている。
こちらはまだ寝ている朝6時頃。
おっさんが「ジュリエット! よし喰え!」などと話しかける。
水道から水を汲む音も大きい。
何事も大音量のおっさん。
騒々しくてこちらは安眠できない。
やれやれ。
日中はおっさんが仕事で外出。
なので、ジュリエットはひとり庭で静かに過ごす。
こちらが隣家の庭の近くをどうしても通らなければならないとき。
おっかないので、犬を刺激しないように声を掛けながら近づく。
隣家の庭との境に一応金網がある。
でも、それはほんの1メートルくらいの高さ。
ジュリエットの身体の高さとほぼ同じ。
乗り越えようと思えば簡単にできるはず。
怖い。
できるだけその緊張感を出さないように近づく。
「ジュリエット、ここの暮らしはどうだい?」
などと声を掛けながら。
仲良しにまでならなくてもよいが、敵とは思わないでもらいたい。
しかし、そんなこちらの期待は簡単に砕かれる。
ジュリエットはこちらの気配を感じて立ち上がる。
そして、目を合わさず、視界の隅にこちらを置く。
ウーーーッ。
低い唸り声。威嚇だ。
でも、こちらもそこを通らなければならない。
さりげなく、でも少しずつ距離が近づく。
3メートルくらいの距離になったとき。
ワン!
ジュリエットは吠えた。重低音。より激しい威嚇だ。
やれやれ、困った。
怖くてそこを通ることもできなくなってしまった。
こんなに図体がでかいんだから、どっしり構えていればよいのに。
正確はものすごく臆病。
ここでもギャップ大きすぎなのだった。
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