亀の浜へ その3

ギジ録 コスタリカ探訪 その15


ウミガメの産卵を見終わったあと宿に戻る。

地元っぽさを感じさせない宿である。

でも、そもそも地元っぽさって何だろう?

その疑問はあるが、それは置いておくとしよう。


ともかく、海と水路に挟まれた地面に立つ家。

その庭に人工的なプールを作る発想がかえって意外。


高校生の頃にワクワクした永井博さんの絵をほうふつとさせた。

大瀧詠一さんのアルバムA Long Vacationのジャケットとか。


朝、宿をチェックアウト。

すると、ボートで再び「ちょっとした村」に行く。


前日は暗かったのでよく見えなかったが、船着き場にあるのは大きなオブジェ。

高さ5メートルはあるだろうか。

2羽のカラフルな鳥を再現した大きなハリボテだ。


船から降りた観光客である我々が、まるで門をくぐるようにハリボテの間を抜けて陸に上がる。

陸に上がってすぐにある家屋がお土産屋さん。


「いまから45分間は自由時間。」

エンリケはそう言った。

「45分後にまたここで集合。いいね。

それから、村の奥のほうに入らないように。いいね。」

子供を躾ける親のようにエンリケはそう言うと、 どこかに歩いていってしまった。

この地に知り合いでもいるのだろうか。


売っているお土産のことは、その後の年月で忘れてしまった。

絵葉書とかキーホルダーのようなものはきっとあったことだろう。

でも、「地元っぽい」素敵なものはなかったように思う。

お土産を見るのも早々に飽きてしまい、店を出る。


入ってはいけないと言われると、つい興味が湧く。

昨晩の産卵ショーの砂浜はどっちだろう?

村はどのくらいの広さなのだろう?

恐る恐る、水路に沿って村の小路を歩く。


すると、家はほんの数軒あるだけで、すぐに村の端になっていた。

そこから海のほうを眺める。

砂浜が広がっている。

そして、砂浜の手前に、大量のビニール袋が積まれていた。

ゴミ捨て場のようだ。

これは観光客に見せないほうがよい光景。

なので、入ってはいけない、と言っていたのかもしれない。

勝手に入ってごめんなさい。


45分後にエンリケはちゃんと船着き場にいた。

モーターボートは再び出発。

これでトルトゥゲーロともお別れだ。

2羽の鳥のオブジェが我々を見送っている。


往路で船に乗り換えた場所に戻る。

そこに人懐っこい笑顔が待っていた。

バンの運転手、チャボだ。


写真:コスタリカは鳥の楽園。

※本文とは関係ありません。

Giji Rockerのギジ録工房/Giji Rock Workshop

ギジ録。それは疑似的な議事録。 愛おしい時間の記憶。それを書き留めた記録。 100%正確とは限らない。 誇張や捏造が紛れているかもしれない。 だから議事録でなく、ギジ録。 ほぼ実話(99%)から、ほぼ作り話(1%)まで。 疑似度はそれぞれのギジ録ごとにまちまち。 アホらしいのは百も承知。 軽やかに笑い飛ばしてお許しください。 Gijiroku Rocks!