予告してくれ 日本編

時期:2015年8月

場所:関東地方某所

登場人物:馬路出(まじで)さん(仮名)、眼科医(?)、エキストラ5名、ギジロッカー


運転免許証を更新する時期がきた。

そこで僕は運転免許センターに足を運んだ。


新たに免許を取ろうと試験を受けた人たちが待合室にいる。

結果発表を待っているようだ。 表情は硬い。


更新のほうは、出すもの揃えて出せば万事OK。

気軽なはず。

だが、硬い表情の受験者たちにつられて、つい緊張感が少し出てくる。


ここは人口の多い都道府県なので混んでいる。

たまたま一年のなかのこの日にふらっと来た。

それでこの大人数。

運転免許の手続きをする人だけでも連日これだけ多く集まるのか。

これが大都会というやつか。


更新だけでもかなり人が多い。

それを効率的にさばく職員。

この職員さんたちはみな警察官?


工場のベルトコンベアーのように順路を進む我ら更新者たち。

お互い面識がないので会話はない。


さて、次は視力検査だ。

蟻の行列のように整然と並び、少しずつ前進。

あと5、6人というところまで近づくと、室内の検査の様子が見える。

眼科医だろうか、白衣を着た中年男性が検査をする側だ。


医:それでは…お次は…馬路出(まじで)さん。

馬:はい、馬路出です。よろしくお願いします。

医:では、この器具でまず右目を覆ってください。

私が指す図形を見て、空いているほうを言ってください。

馬:はい、わかりました。

医:まずこれは?

馬:下。

医:次、これは?

馬:上。

医:では、これは?

馬:えっと…横。

医:よ、横?

馬:はい。

医:あのー、……。

馬:えっ?……。

医:……。

馬:あっ! すみません。右!


この間、馬路出さんの表情はまったく変わらなかった。

ずっと真剣なままだった。

それがまた可笑しさを増していた。


緊張感のなかで予告なく披露された天然ボケ。

思わず爆笑してしまいそうになる。

しかし、周りは見ず知らずの群衆。

必死で笑いをこらえる。

すると、馬路出さんと僕の間に並ぶ5人ほどの人たちの肩。

それらも小さく震えているのを僕は見逃さなかった。

みな、笑いを必死でこらえていたのだ。


馬路出さんに僕は言いたい。

面白いこと言うなら、その前に予告してくれ~!

不意打ちはきついよ~。 


(ギジ度85%)


Giji Rockerのギジ録工房/Giji Rock Workshop

ギジ録。それは疑似的な議事録。 愛おしい時間の記憶。それを書き留めた記録。 100%正確とは限らない。 誇張や捏造が紛れているかもしれない。 だから議事録でなく、ギジ録。 ほぼ実話(99%)から、ほぼ作り話(1%)まで。 疑似度はそれぞれのギジ録ごとにまちまち。 アホらしいのは百も承知。 軽やかに笑い飛ばしてお許しください。 Gijiroku Rocks!