サンカルロスでのフィールドワーク 1

ギジ録 コスタリカ探訪 その21


2004年1月、コスタリカの首都サンホセでの日々。

カレンさんのおかげで色々と新しいことを学ぶ日々。

でも、今回のコスタリカ訪問の目的は農村でのフィールドワーク。

早くその段取りを付けなければならない。


コスタリカ到着前にカナダからメールで事前調整を図った。

3か月という滞在期間を最大限、有効活用したい。

そのため、スケジュールを早く決めたい。

そういう思いが僕にあった。


しかし、具体的なことは事前にはなかなか決まらなかった。

すべてはコスタリカに着いてから決まることになる。

これは相手のあることなので仕方ない。

それに、あまり先々のことを早く決めようと急ぐのはプラビーダ精神に反するのかな?

郷に入っては郷に従え。

そういうことなのだろう。


フィールドワークの候補地にとにかく問い合わせをしていた。

そして、情報が回り回って、先方から熱心なメールが1通届いた。

それは、コスタリカ北部サンカルロス郡にあるエコロッジの経営者からだった。


ロッジではボランティアスタッフを受け入れている。

過去にもボランティアとして働きながら、空き時間に研究した学生もいる。

よかったら一度、会って話をしないか?

ざっくり言うと、このような内容だった。

とてもありがたい申し出だった。


ところが僕は、このありがたい申し出に即答できなかった。

なぜなら、僕の研究上の関心は「共有林」だったからだ。

このサンカルロス郡のロッジは私有林における事業だった。

自分の研究計画からは外れている。


しかし、調べてみるととても魅力的な事業のようだ。

経営者の思いや物語がウェブサイトに載っている。

読んでみると、とても共感できる内容だった。

場所そのものも素晴らしそうだと感じた。


ここに滞在してみたい!

自分の感覚を頼りに、僕はそう心に決めた。


元の研究計画とは違うが、位置づけを整理できればよいだろう。

共有林と対比するために私有林も調査するという整理はどうだろう?

カナダの指導教員の先生にもその旨伝え、OKとの返事をもらった。


先走って言うと、あくまで結果論ではあるが、この判断は正解だった。

対比できる2種類の所有形態を事例にしたことで得ることは多かった。

やはり比べてみることで共通点と違いが見えるものだ。


自分が最初から計画したわけでなく、相手の厚意がきっかけだった。

その流れに柔軟にうまく乗ることはできた。

それによって、よい道が開けたことはありがたいと思っている。

縁とタイミングにも恵まれた。


1月中旬のある日、サンホセ中心部のホテルのカフェで経営者と会う。

ビクトルさん(仮名)は国際的な金融機関でバリバリに働いた経歴を持つ紳士。

その息子のカルロスさん。そして妻のマグダさん(いずれも仮名)。

僕を含む4名でコーヒーを飲みながら1時間ほど話した。

後から思えば、一応、面接のようなものだったかもしれない。

ただ、その時はとても気軽な会話だった。プラビーダだね。


お互いに異存なく、僕はロッジに滞在させてもらうことになった。

彼らは普段は都会に住んでいる。

そして、月2回ほどの頻度でエコロッジに行く。

それは物資の補給の目的もある。


次にカルロスがロッジに行くのが5日後とのこと。

僕は彼の車に乗せてもらって現地に行くこととなった。

それまではフィールドワークに備えつつ小説を読んだりして過ごした。


さあ、夢に見た農村での本格的なフィールドワークがいよいよ始まる!

僕の胸は期待(と少しの不安)に高鳴っていた。



写真:首都サンホセの中心部にあるホテル。

歴史を感じる。

この1階のオープンカフェでビクトルさんたちと初めて会った。

※本文と大いに関係あります。

Giji Rockerのギジ録工房/Giji Rock Workshop

ギジ録。それは疑似的な議事録。 愛おしい時間の記憶。それを書き留めた記録。 100%正確とは限らない。 誇張や捏造が紛れているかもしれない。 だから議事録でなく、ギジ録。 ほぼ実話(99%)から、ほぼ作り話(1%)まで。 疑似度はそれぞれのギジ録ごとにまちまち。 アホらしいのは百も承知。 軽やかに笑い飛ばしてお許しください。 Gijiroku Rocks!