ですよねモーメント
時期:2010年代半ばのある平日のランチタイム
場所:ある職場の応接コーナー
登場人物:バンブーさん(仮名)、ベルさん(仮名)、ギジロッカー
バンブー(最年少男子):うちの嫁さん赤味噌好きなんですよねー。僕は白味噌派なんですけどねー。白のほうが断然おいしいですよねー。
ベル(女子):まー、好みによるし、料理にもよるわなー。
バ:ですよねー。
ギジロッカー(最年長男子):……。
バ:どっちかがあまりにこだわると家庭内分裂の危機なんで、しかたないっすねー。まー、合わせ味噌にするのが問題解決の近道なんですけどねー。
ベル(女子):でも、それが根本的な解決とは限らんけどなー。味自体も間をとりゃいーってもんでもなくて、かえってどっちつかずになっちゃうということもあるやろ?
バ:ですよねー。
ギ:……。
バ:最近ふと思い付いたんですけど、この味噌問題の話って、生物の進化、というか自然選択とすごく似てると思うんですよねー。
ベル(女子):一瞬それっぽく聞こえるけど、ナンセンスやわー。気の遠くなるような長い時間をかけて環境に適応した遺伝情報が残ることと、結婚してから数年間のあんたら夫婦の間のことと、ごっちゃにしとるだけやん。問題のすり替えやね。
バ:ですよねー。
ギ:……。あのさー。
バ:えっ?
ベ:どしたの、ギジさん?
ギ:気づいたんだけどさー。
ベ:あたしが言い過ぎたんとちゃう?
ギ:いや、1回もなかったんよ。
バ:えっ、何がですか?
ギ:ですよねモーメントが。
ベ:なんやねん、それ?
ギ:「ですよね」という相槌。
バ:あー、僕の口癖ですね?
ギ:そー、度々登場したよねー。
ベ:口癖は誰にでもあるやろ。
ギ:いや、それはそーなんだけどさー。
バ:じゃー、何が問題なんですか?
ギ:違和感だよ、違和感。
ベ:違和感?
ギ:そう。違和感。
バ:どーゆーことですか?
ギ:その「ですよね」が出るとき。全然「ですよね」の流れじゃない場面なんよ。
ベ:そう言われたらそうかもしれんね。
ギ:ことごとくそーなんよ。前後のつながりがおかしーんよ。
ベ:なるほど、言われてみたら確かにそやなー。
バ:ですよねー。
ギ:あっ、いま!
バ:あっ、口癖なんでまた出ちゃいました。
ギ:ようやく初めて出た。
ベ:えっ、どーゆーことやねん?
バ:何が初めて出たんですか? さっきから連発してますけど。
ギ:「ですよね」モーメント。初めて前後がちゃんとつながってた。
バ:……。
ベ:……。
バ:あっ、もう1時だ。昼休み終わっちゃいました。なんか、僕のせいで無意味な会話でお二人の貴重な休み時間を台無しにしたよーな気がします。すみません。
ベ:いやいや、一見馬鹿げてるけど、ある意味、結構深い話だったんやない?
バ:ですよねー。
ギ:それそれ! それだよ!
ベ:ですよねモーメントですか?
ギ:じゃないほう。完全にそーだろ!
バ:ですよねー。
(ギジ度:65%)
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