サンカルロスでのフィールドワーク 6
ギジ録 コスタリカ探訪 その26
熱帯のジャングル。
基本のトレイルをカルロスに連れられて歩く。
途中で原生林の区画を出る。
そこからは原生林区画の縁を通ってロッジに帰る。
舗装はされていない。
だが、自動車が通れるくらいしっかり整備された道だ。
原生林を左手に見つつ、右側の開かれた土地の利用に目が行く。
小規模な農業や林業がおこなわれている。
この土地を買ったときのビクトルさんの動機は農業の実践だった。
だから、こうした土地の使い方も不思議ではない。
畑から収穫した野菜をロッジで出す料理にも使うとのこと。
芋の一種キャッサバや、ヤシの芽の芯(パルミート)などだ。
さらに歩くと沼が見えてくる。
そうすると、もうロッジの近くに戻ったことになる。
昔はアクセスを阻む邪魔者だった沼。
それがいまではこのロッジの魅力の一つとなっている。
そこにはカイマンと呼ばれる淡水ワニが棲んでいるそうだ。
ボートの貸出もしている。
ロッジに戻ると、カルロスから言われる。
「それじゃ、明日からガイドよろしく。」
えっ? この一度きりの研修だけで、次はもう本番?
お客さんを本当に案内しろというの?
正直、戸惑ってしまう。
自信もない。
しかし、それがここでのやりかたらしい。
であれば、覚悟を決めて従うしかない。
どきどきの初日は何とか無事に終えた。
その後、滞在中に僕は何回も実際にガイド役を務めた。
結論から言うと、なんとか役目を果たすことができた。
このとき役立った技能、というか考え方がある。
それは「参加型」である。
ワークショップを始めとする参加型の手法について僕は学んでいた。
その知識、というか意識。
それが僕を助けてくれた。
思い返せば、ある研修を日本で受けたときのこと。
いわゆるネイチャーガイドの達人の仕事ぶりを参加者目線で知った。
そのガイドは問いかけることが上手であった。
知識を一方的に与えるだけのガイドは自己満足なのかもしれない。
このコスタリカのジャングルに僕は詳しいわけではない。
むしろお客さんのほうが知っていることもある。
そんなときはお客さんにその知識を共有してもらえばよい。
「教える」ということに自分が固執しなければよいのだ。
一緒に歩くこの時間をいかに安全に、そして楽しく過ごしてもらえるか。
そこに集中すればよい。
この考えかたは間違っていなかった。
もちろん、時間が経ち、回を重ねるごとに自分の知識も増えた。
お客さんから聞いたことが次の自分の説明に活かせることもあった。
他のスタッフが案内するツアーに連れて行ってもらう機会も1、2度あった。
カルロスとはまったく違う案内のしかたをしていて目から鱗が落ちた。
基本的な共通事項はあるが、あとは人それぞれの味を出せばよいのだ。
そう気付かせてもらった。
ボランティア・ガイドという仕事から学んだことはとても多い。
環境に関する知識ということだけでない。
役割をもらってそこで地元の人たちと共に暮らし、共に働くこと。
そうやって肌感覚で理解できたこと。
それこそ自分にとって大きな財産となった。
写真:原生林(左)の縁を囲む沼。
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