サンカルロスでのフィールドワーク 7

ギジ録 コスタリカ探訪 その27


ロッジが提供するガイド付きジャングルツアー。

それ以外に、もう一つのツアーがあった。

川下りのボートツアーである。


ボートツアーのガイド業務「研修」も1回のみ。

ドミンゴがガイドするツアーに同行。

次からは自分がガイドにならなければならなかった。


ツアーは朝食後すぐに始まる。

ロッジから車でまず移動。

途中から、道のすぐ横にサン・カルロス川が見える。

しばらく進むと、このあたりではひときわ立派な家がある。


その家から斜面を下った川岸に船がある。

横に2人、縦に7、8列の細長いモーターボート。

簡易な屋根が付いている。


船長が出迎えてくれる。

年齢は40歳くらいだろうか(2004年当時)。

色黒の二枚目だ。

英語は得意でないらしい。

スペイン語であいさつをしている。


いざ出発。

川を下るのは気持ちいい。

慣れるまで少しスリルもある。

川の水の透明度はほとんどない。

カフェオレのような色だ。


水深はそれほどでもないそうだ。

でも、ワニがいるらしい。

なので、ちょっとした緊張感。

基本的にワニのほうが逃げ、向こうから人を襲うことはないとのこと。

でも、間違っても水に落ちたくないね。

ワニ以外に、肉食魚もいるらしいし…。


ときどき船長が船のスピードを落とす。

するとドミンゴが言う。

「左前の水面から突き出た流木にカメがいますよ。」

このように、(外国人にとって)珍しい動物がいるとそれを伝える。

それがガイドの主な役割であった。

カワウ、アオサギ、カワセミなど何種類かの鳥。

コスタリカ以外でも見られる鳥だが、この環境で見ることに意味がある。


ワニもほぼ毎回見ることができる。

パンノキや巨大なセイバという木など、いくつかの樹木も紹介する。

植物に紛れて見にくいが、イグアナやコウモリなどもいる。


しかしここは動物園や植物園ではない。

人の暮らしの場でもある。

川岸には、多くはないが家も点在している。

住民の姿を見ることもある。

釣りをしている人もいる。

手を振ると、手を振り返してくれる。


牧場が見える。

牛や馬がのんびり草を食んだり、休んだりしている。


川にはびっくりするようなものもある。

直径3メートルはありそうな筒状の金属片。

浅瀬なので、その半分くらいが水面より上に出ていた。

聞けば、飛行機のエンジンの残骸とのこと。

1980年代に隣国ニカラグアの内戦のときに川に不時着した軍用機とか。


そんなあれやこれを見ながら川を進むと、T字路のような場所に来る。

ここでのT字とは川の交差点である。

Tの下から上がってきて、横線にぶつかる、という感じだ。

ぶつかるまでの縦の川がサン・カルロス川。

横がサン・フアン川。

サン・フアン川の向こう岸はニカラグア。

そう、サン・フアン川が国境なのだ。


そのT字路の左岸に船を着ける。

そして、陸に上がる。

小さな村がある。


解放的なカフェ。夜はバルになるという。

病院。といっても普段は閉まっていて、時々医師が巡回するときに使う小屋。

国境警備の警察署。

ライフルを持っているのが目に入るとちょっとこっちも緊張。

川を渡ってコスタリカに入る不法入国を見張っているようだ。

違法な薬物の流入なども監視しているのかもしれない。


村を散策したり、カフェで飲み物とともにくつろいだりして小1時間過ごす。

観光客にとって、地元の人たちと直接触れ合う貴重な機会。

後から知ったことだが、この村の住民のほとんどはニカラグア出身。

内戦のなか、命からがらジャングルを歩いてここに来たとのこと。


村での滞在を終えてみんなで再び乗船。

同じ川を上って帰路につく。

やはりところどころで生きもの観察。

船長が何かを見つけると船が速度を緩めたり、岸に近づいたりする。

でも僕には何も見えなかったりする。

地元で生まれ育った人ならではの研ぎ澄まされた感覚だろうか。

そうした地元の人のすごさを目の当たりにできるのも貴重な経験だ。 


写真:サンカルロス川で出会ったワニ。

体を温めるための日向ぼっこをしているのだろう。

船が近づくと、しまいには水にチャポンと潜って消えてしまう。

Giji Rockerのギジ録工房/Giji Rock Workshop

ギジ録。それは疑似的な議事録。 愛おしい時間の記憶。それを書き留めた記録。 100%正確とは限らない。 誇張や捏造が紛れているかもしれない。 だから議事録でなく、ギジ録。 ほぼ実話(99%)から、ほぼ作り話(1%)まで。 疑似度はそれぞれのギジ録ごとにまちまち。 アホらしいのは百も承知。 軽やかに笑い飛ばしてお許しください。 Gijiroku Rocks!