サンカルロスでのフィールドワーク 8
ギジ録 コスタリカ探訪 その28
熱帯のジャングルの縁にあるロッジ。
そこでたくさんの生きものと出会った。
既にそのいくつかについては既に述べた。
他にもたくさんいる。
例えばコンゴウインコという大きな鳥。
鮮やかな赤い色をしている。
それと別に緑色の種類もある。
この緑のほうは絶滅の恐れがある。
なので、この地域の環境保全の一つの象徴となっていた。
コンゴウインコの鳴き声はとてもけたたましい。
夕方にガーガー鳴きながら空を羽ばたくのを見るときがある。
つがいで飛んでいるときもある。
巣に戻るのであろうか。
その巣というのが、アルメンドロの木にある。
トロピカル・アーモンドとも呼ばれる樹種だ。
そのアルメンドロの木の幹のうろに巣を作るらしい。
アルメンドロは非常に硬い木で、以前は伐採が難しかったそうだ。
草地にポツンと高さ20メートル以上はあろうかというアルメンドロを見かけることもある。
周囲の木々は切り払われたが、アルメンドロが残されたのだろう。
そうした開けた景色のなかにあるアルメンドロは観察しやすい。
アルベルトに教えてもらい、遠くから双眼鏡で見たことがある。
うろの中で子育てする緑のコンゴウインコ。
成鳥は体長が40センチメートルくらい軽くありそうだ。
アルメンドロは巣だけでなく、食料源でもある。
何を食べるかというと、実である。
一見するとキウイフルーツを少し扁平につぶしたような色と形。
硬くて割ることは難しい。
だからそんじょそこらの鳥が食べることは不可能だ。
しかし、コンゴウインコは嘴の力が強く、殻を割ることができる。
そして、中にある柔らかい果肉を食べるのである。
僕もゆでた果肉を食べさせてもらったことがある。
自分の手の小指ほどの感じ。
食べた感触は、少しソラマメみたい。
コンゴウインコの食と住に欠かせないアルメンドロ。
今では林業機械の技術も進み、伐採もしやすくなっている。
アルメンドロを含む熱帯林の保全がコンゴウインコに必要だそうだ。
さて、そのように人が魅力を感じる生き物ばかりではない。
このロッジに滞在中のある日、僕は自分が泊まっている部屋でハッとした。
バスルームの片隅に毛むくじゃらのクモがいたのだ。
タランチュラの類だろう。
隅っこで足を畳んで身を小さくしていた。
弱っているのだろうか。
死ぬ間際かもしれない。
であれば危害はないと思い、僕は放っておくことにした。
しかし、その数時間後の夜に再びその場所を見る。
するとクモの姿は消えていた。
部屋じゅうを見回したが見当たらない。
僕は急に恐怖を感じた。
自分が眠っている間に刺されやしないか。
結論から言うと、幸いなことに取り越し苦労に終わった。
でも、このときは少し肝を冷やした。
また、別の夜のこと。
やはり僕の部屋。
こんどはドアのすぐ外の中庭でのこと。
このとき、コスタリカ人の生物学者たちが多く滞在していた。
このジャングルに住む生き物を調査しているのだ。
彼らと談笑しているときのことだった。
30センチメートルくらいのヘビが僕の部屋の外を歩いていた。
何だろう?
生物学者たちと観察する。
すると、そいつはドアの下の隙間から部屋に入り始めた。
生物学者の一人が素早く尻尾を掴んで、ドアの外側に引っ張り出した。
間一髪だった。
すべてが一瞬の出来事だった。
捕まえたヘビを見て彼は言った。
「ファーデランスだ。まだ子どもだけど。」
ファーデランスは毒ヘビだ。
子どもとはいえ、毒ヘビと同室で過ごすのは困る。
自然の豊かな土地で暮らすということ。
そこには魅力とともに危険もある。
そのことを実感させられる日々だった。
写真:緑のほうのヒワコンゴウインコ。
スペイン語ではLapa verdeと呼ばれている。
英語だとGreat Green Macaw。
この写真は2016年に動物園で撮影したもの。
尻尾を除いても頭からお尻まで40センチメートルくらいあり巨大。
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