タラマンカでのフィールドワーク 6

ギジ録 コスタリカ探訪 その36


まだ真っ暗な朝4時頃。

台所から人の活動の気配が聞こえる。

夫妻が既に起床して、朝食を作っているのだ。


ボランティア(という名の居候)である僕。

いつまでも寝坊してはいけない。

そう思って起床。


「君はまだ寝ていていいよ。」

そう優しく言ってくれる。

実際、僕にできる仕事はまだあまりない。


「コーヒーができたよ、飲むかい?」

そうやって1杯勧めてくれる。


コスタリカはコーヒーの名産国。

これまでコスタリカのどこに行ってもコーヒーはよく飲まれていた。

ここでも例外ではないようだ。


「おーっ、うまいぜ、このコーヒー!」

ルーカスさんが、まるで初めて飲むかのように感想を言っている。


365日×数十年。

数万回?飲んできてもこの新鮮な感想。

それだけ、暮らしのなかでコーヒーは大切な飲み物なのだろう。


「砂糖入れる?」

そう僕に聞くルーカスさん。

「いえ、僕はブラックが好きなんです。」

「えっ、そうなの? 僕は砂糖入りが好き。このほうがうまく踊れるよ。」

踊る仕草をしながら、いたずらっぽい笑顔で話すルーカスさん。


夫妻の協働作業で朝食の調理が進む。

ルーカスさんは小麦粉を挽いた粉を練っている。

ほどよい大きさに切り分けて、オリビアさんが焼く。

Arepa(アレパ)と呼ばれる一種のパン。

複数形だとアレパス。

トウモロコシを挽いた粉を使うこともある。

そちらが元々のアレパのようだ。


焼き方にもバリエーションがある。

素焼きのようにさっぱり焼くときもあれば、揚げパンのようなときもあった。


さらに、日によっては、食用バナナの料理がパンの代わりになることもあった。

固いバナナを輪切りにして、それを上からたたいてベシャっと少し潰す。

それを揚げたのがPatacon(パタコン)。

塩味で食べると、ポテトチップスのようにおいしい。


同じ食用バナナでも、きんぴらごぼうのように?細切りにすることもある。

ひと掴み分を塊にして揚げると、Arena(nの上に~がついてアレーニャと発音)になる。

アレーニャは蜘蛛の意味。

見た目が蜘蛛に似ているからそう呼ぶとのこと。

これも美味であった。


さらに、昨日の夕食に出たコメと豆を、こんどは合わせて炒める。

玉ねぎやクラントロ(パクチー)の香味野菜も刻んで混ぜる。

Gallo pinto(ガジョピント)。

コスタリカの最も代表的な食べものだ。


5時頃になると高校生の子供たちが起きてくる。

手早く支度をして、朝食を食べて5時半頃に出発。

スクールバスに拾ってもらう場所まで歩いていく。


入れ替わるように小学生の子供たちも起きてくる。

彼らも6時頃には出かけていく。


だんだん空が明るくなってくる。

朝食を終えたルーカスさんは家畜の世話をしに回る。

これが、家族の毎朝のルーティーンなのであった。



写真:Arepas(パン)、Gallo Pinto(豆と米の焼き飯)、そして卵。

卵料理は目玉焼きというより、油のなかでポーチトエッグにしたような目玉揚げ(?)。

このようにガッツリ食べて、涼しい早朝から活動を開始する。

(2019年撮影)

Giji Rockerのギジ録工房/Giji Rock Workshop

ギジ録。それは疑似的な議事録。 愛おしい時間の記憶。それを書き留めた記録。 100%正確とは限らない。 誇張や捏造が紛れているかもしれない。 だから議事録でなく、ギジ録。 ほぼ実話(99%)から、ほぼ作り話(1%)まで。 疑似度はそれぞれのギジ録ごとにまちまち。 アホらしいのは百も承知。 軽やかに笑い飛ばしてお許しください。 Gijiroku Rocks!